地震が来たとき、心臓や呼吸の病気がある子は、健康な子より選択肢が少なくなります。
だからこそ、先に決めておけることがあります。この記事は「その場で迷わないための準備」を、避難の3つの選択肢と、3つの場面でまとめました。
- まず自分の安全。飼い主が無事でいることが、その子を守る前提です[2]。
- その子をキャリーへ。逃げ出しと落下物から守ります。猫と小動物には、避難に欠かせない道具です[1]。
- 呼吸を見る。口を開けて苦しそうなら危険なサインです[6]。揺れが収まり次第、動物病院へ連絡を。
- 停電していれば、酸素発生器は止まっています。手順は停電したら酸素室はどうなる?へ。
地震のとき、呼吸の病気がある子に起きること
揺れ、大きな音、知らない場所への移動。どれも犬猫にとって強いストレスです。
犬は、緊張や不安だけでも呼吸が速く、荒くなります[7]。猫の喘息は、環境の変化や強いストレス、ほこりや煙で悪化しやすいとされています[6]。
避難所は、人が多く、ほこりや音、においの多い場所です。慣れない環境で、咳や発作が出やすくなる子がいます。
そして停電すると、酸素発生器は止まります。避難所で酸素室を使える保証もありません(→7章)。
つまり、健康な子なら「とにかく避難」でよくても、この子たちは「どこで、どう過ごすか」を先に決めておく必要があります。
避難の選択肢は3つ|家の安全と、その子の状態で決める
まず言葉の確認です。同行避難とは、ペットを連れて避難場所まで安全に避難することを指します。
避難所でペットと同じ部屋で過ごせる、という意味ではありません[1][3]。ペットの飼養場所は、室内の同居から敷地内の屋外まで避難所ごとに違い、そのルールに従います[1]。
だから選択肢は、避難所だけではありません。環境省のガイドラインも「自宅が安全な場合は在宅避難も考えよう」としています[1]。
決め方をひとことで言うと、家が安全なら在宅。危険なら同行避難。受け入れがなければ、車や知人宅は短期のつなぎです。
この判断を地震の直後にするのは、むずかしい。だから次の章で、場面ごとに「先に決めておくこと」を書きます。
場面で考える|地震直後の10分・避難所の夜・車の中

- 自分の安全→その子をキャリーへ→呼吸を見る。この順番を家族で共有しておきます。
- 薬と診療記録を持ち出し袋へ。薬は「持って出る」より「袋に入れてある」状態にしておくと迷いません。
- 停電しているか確かめる。酸素発生器が止まっていたら、停電の手順に従います。
- キャリーにタオルをかける。暗く静かにすると、落ち着く子が多いです。
- 靴とガラスに注意。抱いて歩くなら、足元の割れ物を先に確かめます。
- 飼養場所は避難所ごとに違います。室内同居から敷地内の屋外まで[1]。夜の冷え込みと日中の暑さに、毛布や保冷剤で備えます。
- ほこりと煙を避ける。猫の喘息は、ほこりや煙、環境の変化で悪化しやすい[6]。キャリーの置き場所は、人の動線から離れた壁際に。
- 朝晩、呼吸数を数える。数え方は犬・猫の記事に。普段の数字をメモしてあれば、変化がわかります。
- 口を開けた呼吸、舌や歯ぐきが青紫。危険なサインです[6]。避難所の運営者に伝え、開いている動物病院の情報を自治体や獣医師会から得ます。
- 興奮させない。知らない人や動物との接触は、呼吸の負担になります。
- 小動物は温度に弱い。うさぎ・小鳥・ハムスターはキャリーにカバーをかけ、温度を優先します。種類ごとの目安は小動物の在宅酸素ケアガイドへ。
在宅避難に備える|家の安全と、酸素室の置き場所
在宅避難を選べるかどうかは、家が安全かで決まります。だから平常時の地震対策が、そのままこの子の避難対策になります。
環境省のガイドラインでも、家具の固定やガラスの飛散防止が、日頃の備えの例として挙げられています[1]。
- 酸素室の置き場所|倒れやすい家具や本棚のそば、窓ガラスの近くを避けます。上から物が落ちない場所に。
- 酸素発生器|床に水平に置き、上に物を載せません。コードは足元を横切らないように通します。
- 火気から離す|酸素は燃えやすさを増します。ストーブやコンロ、ろうそくとの距離は停電記事の火気の注意へ。
- 停電時の電源|ポータブル電源や車用電源で、どれくらい動くかの目安も停電記事にまとめています。
- 「家にいます」を伝える|在宅避難の人も支援の対象です[4]。自治体や近所に伝えておくと、物資や情報が届きやすくなります。
- 家族で分担を決める|誰がキャリー、誰が持ち出し袋、誰が発生器と電源を見るか。紙に書いて冷蔵庫に。
持ち出しリスト|呼吸の病気がある子の「追加分」
環境省は、持ち出す備蓄品に優先順位をつけています。優先順位1は、動物の健康や命に係わるものです[1]。
- 療法食、薬
- ペットフード、水|少なくとも5日分、できれば7日分以上[1]
- キャリーバッグやケージ、予備の首輪とリード、ペットシーツ、トイレ用品、食器
優先順位2は情報です。飼い主の連絡先、ペットの写真、ワクチン接種状況、既往症、投薬中の薬、検査結果、かかりつけの動物病院[1]。
この一般的なリストに、呼吸の病気がある子は次を足します。
- 薬は7日分以上+処方内容のメモ。薬の名前、量、回数。切らすと困る薬は、多めに持てるかをかかりつけに相談します。
- 診療記録の写真。病名、検査結果、レントゲン画像をスマホに。充電切れに備えて、紙も1枚。
- 連絡先3つ。かかりつけ、夜間救急、自治体の動物救護の窓口。
- 呼吸数の記録。安静時と睡眠時の「普段の数字」。避難先で診てもらうとき、いちばんの手がかりになります。
- キャリー+目隠しのタオル。ふだんからキャリーに慣らしておきます[1]。
- 酸素関連(持ち出せる場合)。酸素発生器とバッテリー、延長コード、酸素濃度計。酸素室は在宅避難で使います。
- 迷子対策。迷子札、マイクロチップの登録、写真[1]。避難の混乱で、逃げ出す子は少なくありません。
獣医師さんと決めておく3つのこと
災害のときに、いちばん困るのは「判断できる人がいない」ことです。次の3つを、診察のついでに聞いておきます。
- 薬が切れたら、飲めなかったら、どうするか。何日までなら大丈夫か、代わりに気をつけることは何か。
- 「これが出たら、避難中でも受診」のサイン。その子の病気に合わせた、具体的な変化。呼吸数の目安があれば数字で。
- 酸素が使えない場所で、できること・できないこと。家庭用の酸素室に何ができて、何ができないかを含めて。
答えはメモにして、持ち出し袋に入れておきます。地震の直後に、獣医師さんに電話がつながるとは限りません。
酸素室と酸素発生器は、持って避難できる?
結論から言うと、在宅避難なら使える。避難所では使える保証がない。避難先で動かすなら、電源はバッテリーです。
- 在宅避難|そのまま使えます。停電したときの手順と火気の注意は停電の記事へ。
- 同行避難|避難所の電源やスペースは限られ、ルールも避難所ごとに違います[1]。使えない前提で備え、平常時に自治体へ「持病があり酸素発生器を使っている」と相談しておきます。
- 持ち運び|酸素室(オキシボックス)は折り畳んで運べます。酸素発生器は1.0が約5.2kg、1.5が約6.8kg、2.5が約8.5kg。車での移動なら一緒に運べる大きさです。
電源の本命は、バッテリー(ポータブル電源)
バッテリー(ポータブル電源)は、大きな充電池です。停電しても、避難先でも、コンセントの代わりになります。
酸素が欠かせない子ほど、このバッテリーが備えの中心です。
どれくらい動くかは、バッテリーの大きさで決まります。大きさは「Wh(ワットアワー)」という数字で書いてあり、数字が大きいほど、長く動きます。
目安はかんたんです。一晩(8時間)動かしたいなら、1.0・1.5は1,000Wh、2.5は2,000Wh以上。実際の時間は、電源の性能や気温で少し変わります。
なぜ機種で違うかというと、使う電気の量が違うからです。1.0は95W、1.5は105W、2.5は220W。2.5はたくさん電気を使うので、大きなバッテリーが要ります。
- ①大きさ(Wh)を見る|一晩使うなら、1.0・1.5は1,000Wh以上。2.5は2,000Wh以上。
- ②コンセントの出力(W)を見る|バッテリーのコンセント部分に「〜Wまで」と書いてあります。1.0と1.5は100W以上、2.5は220W以上のものを選びます。
- 迷ったら、機種名を当店に伝えてください|使えるバッテリーの条件をお答えします。買う前に、電源のメーカーにも確認しておくと安心です。
- 月に1回は充電|いざというときに残量ゼロでは、意味がありません。
- 酸素室が持ち出せなくても|バッテリーと酸素発生器、送風用チューブもしくは酸素マスクがあれば、キャリーやケージの中に酸素を送れます。
車用電源は「動物病院へ向かう間の補助」
車用電源(カーシガーソケットのインバーター)で、1.0と1.5は車内で動かせます。2.5は車用電源では動かせません。動物病院へ向かう車内では、役に立つ場面があります。
ただ、これを当てにしないでください。最近の車は電子系統が複雑で、アイドリングストップ機能などで電気系統が遮断され、酸素発生器が動かないことがあります。実際に使ってみないと分からない、というのが正直なところです。
燃料が尽きれば車も止まります。だから、車は「移動の間の補助」、備えの中心はバッテリー。この順番で考えてください。
当店のNEVOTONシリーズ(酸素発生器・酸素室)は、ご家庭で使う「家庭用機器」であり、医療機器ではありません。診断・治療・病気の予防を目的とした使用はできません。
「常に高い濃度が必要」「片時も酸素室から離せない」といった重篤な状態のときは、家庭用機器よりも動物病院の医療機器のほうが安心です。獣医師から医療機器での管理をすすめられた場合は、必ずその指示に従ってください。
災害の備えとして、当店がおすすめしている形
当店がおすすめしているのは、車用電源と血中酸素チェッカーが付いた5点フルセットです。血中酸素チェッカーは避難先で状態を数字で確かめるのに、車用電源は病院へ向かう車内の補助に。
濃度計は気温と湿度も表示します。バッテリー(ポータブル電源)は市販品を別にご用意ください。お使いの機種を添えて、当店にお問い合わせください。酸素室は〜10kgならS、〜20kgならMが目安です。
5点フルセット S|〜10kg・小型犬猫に 酸素室S+発生器+濃度計+血中酸素計+車用電源 ▶ 詳細を見る 5点フルセット M|〜20kg・中型犬に 酸素室M+発生器+濃度計+血中酸素計+車用電源 ▶ 詳細を見る迷ったら、体重と病気の状態をお聞きして、いっしょに考えます。本格屋スタッフにお気軽にご相談ください。レンタルか購入かはレンタルと購入の決め方、機種の一覧はNEVOTON MAF miniシリーズへ。
よくあるご質問
地震が来たとき、ペットはまず何をすればいいですか?
まず自分の安全を確保し、揺れが収まったらその子をキャリーに入れます。次に呼吸を見て、口を開けて苦しそうなら動物病院に連絡します。薬と診療記録を持ち出し袋に入れてあれば、そのまま避難の判断に移れます。
呼吸の病気がある犬猫も、一緒に避難できますか?
ペットを連れて避難する「同行避難」が基本です。ただし避難所で同じ部屋で過ごせるとは限らず、ペットの飼養場所は避難所ごとに違います。受け入れの可否と飼養場所を、平常時に自治体へ確認しておいてください。
避難所で酸素室や酸素発生器は使えますか?
使える保証はありません。電源やスペースは避難所ごとに限られ、ルールも異なります。使えない前提で薬と記録を持ち、自宅が安全なら在宅避難、避難先で動かすならバッテリー(ポータブル電源)、という備えを先に考えておきます。
避難所がペットを受け入れていないときは、どうすればいいですか?
ペット受け入れ可の避難所を探す、知人宅やペット可の施設、かかりつけに預ける、自宅が安全なら在宅避難、という選択肢があります。車は短期のつなぎと考え、長引かせないようにします。
車で避難するとき、気をつけることは何ですか?
車内の温度と換気、水分です。曇っていても日中の車内は温度が上がります。夏は熱中症、冬は積雪でマフラーが埋まる一酸化炭素中毒に注意し、その子を長時間車内に残さないでください。飼い主もエコノミークラス症候群を防ぐため、定期的に車外で動きます。酸素発生器の電源はバッテリーを本命にし、車用電源は病院へ向かう間の補助と考えてください。
薬やフードは、何日分用意しておけばいいですか?
環境省のガイドラインでは、フードと水は少なくとも5日分、できれば7日分以上とされています。薬は切らすと困る子ほど余裕を持ち、何日分まで持てるかをかかりつけの獣医師に相談してください。処方内容のメモも一緒に。
猫と避難するときの注意はありますか?
キャリーにふだんから慣らし、タオルで目隠しをして暗く静かにします。避難先のほこりや煙、環境の変化は喘息を悪化させることがあります。口を開けて呼吸していたら危険なサインなので、動物病院に連絡してください。使い慣れた猫砂も持ち出し品に入ります。
多頭飼いのときは、どうすればいいですか?
キャリーは1頭に1つ用意し、呼吸の病気がある子の準備を優先します。ほかの子の持ち出し品は家族で分担を決めておきます。避難所では犬同士の間隔を十分にとることが求められるため、それぞれのキャリーやリードを用意してください。
本格屋のNEVOTON(酸素発生器・酸素室)は医療機器ですか?
いいえ。当店のNEVOTONシリーズは、ご家庭で使う「家庭用機器」であり、医療機器ではありません。診断・治療・病気の予防を目的とした使用はできません。「常に高い濃度が必要」「片時も酸素室から離せない」といった重篤な状態のときは、動物病院の医療機器のほうが安心です。獣医師から医療機器での管理をすすめられた場合は、必ずその指示に従ってください。
- 環境省「災害、あなたとペットは大丈夫?人とペットの災害対策ガイドライン〈一般飼い主編〉」(2018年3月)env.go.jp
- 環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」(2013年6月)env.go.jp
- 埼玉県保健医療部生活衛生課「ペット同行避難ガイドライン(避難所運営編)」pref.saitama.lg.jp
- 内閣府(防災担当)「在宅・車中泊避難者等の支援の手引き」(2024年6月)bousai.go.jp
- JAF「ペットの防災(クルマに関する注意喚起)」jaf.or.jp
- アニコム損害保険 猫との暮らし大百科「猫も『喘息』になる?どんな症状?治療法は?」(監修:溝口やよい獣医師・2025年6月3日更新)anicom-sompo.co.jp
- アニコム損害保険 犬との暮らし大百科「犬の呼吸が速い・荒い!原因や対処法、考えられる病気について【獣医師監修】」(監修:石川美衣獣医師・2024年8月1日更新)anicom-sompo.co.jp
※ 本記事は上記を参考に、本格屋スタッフが一般的な情報としてまとめたものです。避難の判断は自治体の指示に従い、病気の子の対応はかかりつけの獣医師にご相談ください。
※ 当店のNEVOTONシリーズは家庭用機器であり、医療機器ではありません。獣医師から医療機器での管理をすすめられた場合は、必ずその指示に従ってください。
まとめ
- 順番自分の安全→キャリー→呼吸を見る→薬と記録。地震の直後はこの4つだけ。
- 選択肢家が安全なら在宅。危険なら同行避難。受け入れがなければ、車や知人宅は短期のつなぎ。
- 電源本命はバッテリー。一晩動かすなら1.0・1.5で1,000Wh、2.5で2,000Wh以上。車用電源は移動の間の補助で、当てにしない。
- 準備薬7日分と処方メモ、診療記録の写真、呼吸数の記録、獣医師さんと決めた3つのメモ。
地震は選べません。でも、その子の避難の形は、今日決めておけます。持ち出し袋に、薬と記録とメモを1枚。それだけで、あの10分の迷いがひとつ減ります。


